[レビュー] SOULNOTE SM10をFundamental SM10Zにバージョンアップした

皆様こんにちは.Nony(  )です.

ついに報告できる日がやってきました!

タイトルの通り,この度愛機SM10がSM10Zにバージョンアップされて帰ってきました!!


以下,惚気話です.冷静に書いた記事では無いこと,多分にこのスピーカーに対する愛が強すぎてバイアスが掛かった記事であることをお許しください.

ひとまず謝罪

Twitterのフォロワーならびに当ブログの読者の皆様,「次のスピーカーは何?」「ついにRM10Z!?」「Dynaudioか・・・?」など,様々な思惑が飛び交ったようですが,ごめんなさい.



SM10Zにバージョンアップするためのお別れでした.



下記ブログにも書いていますが,
「手放さないって約束しただろ!(`・ω・´)キリッ

SM10とSM10Zについて

筆者がSM10を中古で購入したのは2019年の1月です。
同軸ユニット1発でしかも比較的小型なボディから発せられているとは思えない、キビキビしたサウンドと低域の解像度の高さ,空間の壮大さにこの時点で惚れ込んだものです。さらには,キレッキレしているのに耳が痛くない.

そしてFundamentalについて調べた際に、筆者がSM10を購入した際には既にその「深化(進化じゃないですよ)」モデルとしてSM10Zが発売されていると知りました。

また、実際にFundamentalにてSM10Zを試聴した際により解像度が高まりつつも自然なサウンドに感動し「いつかはSM10Zに買い換えるぞ!」と心に決めたのでした(SM10からSM10Zへのバージョンアップサービスは期間限定で筆者が気づいたときに既に期限が過ぎていたため)

バージョンアップの経緯

2019年11月の東京インターナショナルオーディオショウ開催の際に、たまたまFundamentalの鈴木 哲氏にお会いする機会があったので、スピーカーのオーダーについてお話した際にSM10Z購入予定の旨お伝えしたところ、

「SM10持ってるんでしょ?そんなこと(別途購入)せんでいい!」

と、なんとご厚意で期間外にも関わらずバージョンアップしていただけることに(この期間外のバージョンアップについては公開に問題ない旨、鈴木氏からご了承頂いております)。

鈴木さん、誠にありがとうございます!

SM10を眺めておく

バージョンアップの前にSM10の外観を写真に収めておくことにします。


正面.ピアノ塗装がかなりキレイで,撮影時は顔の映り込みに気をつけねばなりません.なんとこの塗装,11層にも及ぶそうです.

ちなみに,上位機種RM10Zでは樺集成材が丸見えですが,その理由を聴いたところ,「塗装で音を調整している」とのことでした.つまりRM10Zはピアノ塗装しないほうが理想の音に近づくようです.

スピーカー本体と板の間に隙間があるようにも見えますが,ここにも秘密があります.それは後述します.


スピーカーターミナルは金メッキです.筆者は裸線を挟んで使っているため問題ありませんが,バナナプラグは差し込みが浅く不安になる人もいるようです.


ピカピカのピアノ塗装.


隙間の秘密です.ボトムバスレフ方式を採用しています.さらにその下に別途板を設けることで,スピーカー下部の土台による音への影響を極力排除しています.


Fundamnetal(当時のSOULNOTE)のスピーカーの代名詞といえばなんと言ってもコレかと思います.同軸ユニット.

フルレンジはポリプロピレンコーン,高域はソフトドームツイーターです.様々なメーカーが振動板の素材に先進的な素材を用いることが増えてきましたが,今でもポリプロピレンというのはなかなか少ないのではないでしょうか.

TADやTANNOYやKEFのようにコーン型振動板の中央にツイーターがピッタリとハマっているタイプではなく,ツイーター部だけ前にせり出しています.TEAC S-300NEOみたいな感じ.


少しばかりSM10への愛を

筆者にとってSM10は,人生で初めて「もう手放さないぞ!」と思わせてくれたスピーカーです.

SM10のSMは"Small Monitor"の意味であると筆者は記憶していますが,「モニターらしからぬ音色の楽しさ」,「各音域の重心の低さを持ちつつも暗くならない鮮やかさ」,「楽曲の雰囲気を何か別の色に染め上げること無くそのまま出してくれる点」など,初めて聴いたときに腰を抜かすほどの衝撃が身体中を走ったことを今でも覚えています.

聴いててめちゃくちゃ楽しいのに計測上は非常にフラットです(リンク先PDF注意).

そしてさらにすごいのが「何を聴いても楽しい」という点です.
筆者がいろいろなスピーカーを聴く中で,「何を聴いても楽しい」と思えたスピーカーは指折り数えれる程度しかありません(良いスピーカーはたくさんあります)が,SM10はその中の一つです.

モニターというと「音像がピッタリと定位して広がりがそこまで得られない」という印象をお持ちの方も多いかと思います(筆者もそうです)が,筆者のセッティングでは音像はピタッと合いつつも広がりがあります.

特にボーカルはどこにいてもボヤけを感じません.これは音量を維持したままで聴取位置を離れてもボーカルがしっかり聴こえるということです.

なんとも「不思議なスピーカー」ですが,そういう点も含めて筆者の生活様式に上手く融け込んでくれた,そんなスピーカーです.

バージョンアップのために発送

2021年1月16日の午後に発送しました。実際には2021年1月18日にFundamentalの社屋に到着するようにしました。

元箱がない状態でスピーカー本体にサランネットを装着し、スパイクはネジと交換してスパイクを同封して発送しました。

いってらっしゃい!

帰ってきた

おかえりなさい!

2021年1月20日に到着です(依頼した際は半月ほどと提案されていましたので早くて驚きました)。

早速開けていきましょう!


箱はそのまんまです.ラッピングされて送られてきます.


開けると保証書とスパイクがお目見え.

しっかりと新しいスパイク(スリット付き)になっています.


本体を包む布袋.実際にはこの外側に更にビニールで包装されています.


開けました.やはりピアノ塗装が美しいです.


ターミナルが大型ロジウムメッキに変更されています.


新旧スパイク.先端にスリットのあるほうが新型です.若干切削の精度が上がっているように見えます.


設置しました.


早速聴いてみる

細かいバージョンアップ内容は後述するとして、さっさと聴いてみましょう。筆者は待ちきれないのです!

さて,接続した直後の音ですが,明らかに
「眠い・・・(・_・;)」

正直「別のスピーカーが届いたんじゃないか」と少し心配するくらいには出音がかなり眠い印象でした.

ユニットそのものには変更が無い(交換していません)ですが,ネットワークを変更するためかエージングが必要と判断しましたので,とりあえず鳴らし込みます.


SM10からの変更点

エージングする間,SM10とSM10Zの違いをまとめておきたいと思います.以下の3つが挙げられます.

ネットワークの変更

ネットワークの部品をより高品位・高精度なものに変更しています.これにより過渡応答性の向上とユニットの繋がりがよりスムーズになったとしています.

スピーカーターミナル変更

スピーカーターミナルを金メッキからロジウムメッキの大型のものに変更しています.これによりバナナプラグもしっかりと差し込めるようになっています.ターミナルのプレートも樹脂から頑丈なアルミニウムに変更になっていますね.


内部容積の最適化

スピーカーターミナル変更に伴い内部容積が変化していますが,そこを無視することなく最適化しています.他のウェブサイトを少し調べてみると,ミリメートル単位でバスレフの隙間も変わっているとのことです(気づきません).

エージング後レビュー

到着から100時間ほど鳴らし込み,馴染んできましたのでレビューします.

まず気づいたのは,「余裕が増した」印象です.バージョンアップ前の時点で既に余裕綽々だったのですが,例えばボーカルのシャウトや直線的な波形を持つディストーション,オーバードライブなど,急激に変化するものに対する追随性が格段に向上しました.

更には,音の消え際の収束が速くなったように感じます.アンプのダンピングファクターが向上しているかのような変化といえばわかりやすいでしょうか.それに伴い,ヘッドホン装着時にハッキリ聴こえていたような裏打ちの素早さに更に磨きがかかっています.

細かく,そして小さくシンバルを打ったときなどの素早く小さな音の明瞭性が向上したと感じます.

いくつか音楽を聴いた印象を書きます.

BSOD - Afterburner



もはや筆者の試聴曲の定番になりつつあります.「こんな打ち込み系でレビューなんてするんじゃない!」と多方面からお叱りを受けそうな気もしますが,ユーザーの好みの曲を満遍なくこなせてこその「愛機」となると筆者は思ってますので,ジャンルは気にせずに色々聴いてレビューします.

こういったいわゆる「EDM」と呼ばれるジャンルの楽曲はバスドラ,スネア,タム,クラップ,シンバルなどのパーカッションが同時に鳴るうえにコンプレッサーの掛かっている(昔ほどコンプは極端ではなくなりましたが)曲が多いため,総じて出音が飽和しやすいと筆者は思っています.特に小型ブックシェルフスピーカーは感度の低さ故か,飽和するうえに「潰れやすい」「頭打ちになる」といった状況になりがちです.

しかしSM10Zは少し様子が違うようです.あくまで筆者の環境においては「潰れる」などと言った様子は聴いてる限り感じ取れませんし,他の楽器の音を奏でる余裕をしっかりと確保しつつもドラムの迫力は前面に押し出してきます.確かに音圧は他ジャンルと比べても大きめではありますが,ボリュームをあまり操作せずとも不快感を感じません.

Billie Eilish - Bad Guy



低域の再生限界を確かめることができます.さすがに大型ウーファーを持つフロアスタンディングスピーカーのような「地響き」を再現できる表現力は期待できませんが,沈み込みだけで見れば過不足無く,Billie Eilishのミステリアスかつコミカルな楽曲の雰囲気は十分に楽しむことができます.

Billie Eilishの楽曲は時折ウーファーを飛ばすかのごとく,「ウァブルベースの挑戦状を叩きつけてくる」楽曲がありますが,今のところ耐えています.

Billie Eilish本人の声にときおり含まれるザラザラしたエフェクトや,消え入りそうなウィスパーボイスから出てくる言葉もハッキリとわかります.

BartolomeyBittmann - Westen



バイオリンとチェロの二重奏.かなり起伏に富んだ演奏でダイナミックレンジが広めなのが特徴ですが,ちゃんと小音量が埋もれることなく出てきます.特にチェロの胴鳴りが心地よく,弦と弓を当てる際の音やピチカートなどの微細な表現,弓を擦りながら離す際の音の消え際の余韻も不満がありません.

筆者がクラシックを聴き始めたのはコレがほぼ初めてなので,他のスピーカーがどう聴こえるかまだまだ経験不足です.したがって,この楽曲の感想はこのあたりで止めておきます.

GoGo Penguin - Control Shift



ピアノトリオです.ゴースト(ドラムの裏打ち)が多めの曲で,「シンバルを何回連打しているのか」がつかみにくいくらいには連打の回数が多いのですが,小音量のゴーストでありながらも明確に描きます.

また,こちらの楽曲はコントラバスではなくエレキベースが使われていますがかなり低い音が含まれています.さすがに大型ウーファーのような最低域の量感は厳しいと言わざるを得ない部分がありますがそれでもしっかりと演奏されていることは明確に分かりますし,解像度も必要十分です.小型な振動板を活かした最低域の描写が際立ちます.

余談ですが,筆者はこの楽曲をTAD R1TXで聴いたことがあります.お部屋の環境も非常に良くて,エレキベースの最低域の量感と解像度を両立しつつも空間に広がるサウンドを聴いたときは終始鳥肌が収まりませんでした.筆者のシステムを作り上げる上で今でも参考になっています.

宇多田ヒカル - 荒野の狼


宇多田ヒカルの声に特有の「ハッキリした声とかすれた声の2つの声が聴こえる」(非整数次倍音が多いため)という現象に初めて気づきました.SM10のときにも気づいたことがありませんでしたので,最初SM10Zで聴いたときは違和感を否めませんでしたが,コレが宇多田ヒカルの声の特徴だと知ったときは驚きに変わりました.「ここまで微細な表現をクッキリと描くのか」と.

あとこの楽曲には金管楽器の演奏がふんだんに含まれていますがここも金属的な付帯音がキンキンと耳に付くほど余分になるということなく,開放的です.

注意点

SM10のときからそうなのですが,セッティングに敏感に反応します.SM10Zが届いてからSM10を使用していたときのような空間表現に戻すまでに3日かかりました.

筆者のようなデスクトップオーディオの環境だと,スピーカーからの距離が小さい分スピーカーの位置や内振りの角度はフロアスタンディングより厳しくないと考えていました(聴取ポイントからツイーター位置までの半径が小さくなるため)が,筆者の環境でもミリメートル単位で印象が大幅に変わってしまいます.


総評

個人的にこのスピーカーで楽しめない楽曲ジャンルは現在(2021/01/23)のところ思いつきません.SM10を購入したのは2年前で,しかもひょんなきっかけではありましたが,20代のうちにこのスピーカーに巡り会えてよかったと改めて感じました.

比較的大きな音量からごく小さな音量まで,微細な表現に差が出ない.しかもこのサイズで.

これがSM10Zの最大の特徴かと思います.

大きさとか価格とかの制約を外してしまえば,これより音質がよいスピーカーはたくさんあります.もしかしたらSM10Z・RM10Zより音楽が楽しく聴けるスピーカーに出会えるかもしれません.

しかし,今の所そんなスピーカーには出会えていません(肩を並べるものはあります).「音楽を聴いたときの楽しさ」至上主義の筆者にとっては.

それくらいにはこのFundamentalのスピーカーが筆者の目の前で奏でてくれる音楽は筆者に取って最も楽しい瞬間の一つであると間違いなく言えます.


最後に

しつこいようですが,

「一生手放さねぇ!(`・ω・´)キリッ」


以上,SM10からSM10Zへのバージョンアップ報告ならびにレビューでした.

20代前半でこのスピーカーに出会えて良かったと本当に思っています.就職をしていろんなスピーカーを試聴できる環境に身を置いた現在においても,魅力が色褪せることなく筆者のオーディオの中核を成しています.

これまでのSM10との2年間を思い出しつつ,そしてこれからSM10Zと共に歩むオーディオ人生に空想を巡らせつつ,この記事を締めたいと思います.

次回も乞うご期待です!
それでは.

 

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